Role
Model

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研究者という仕事は 、世界を変える可能性を秘めている

埼玉大学大学院

理工学研究科准教授

長谷川 有貴

埼玉大学教育学部出身

略 歴

2002年~埼玉大学工学部 情報システム工学科助手
(略)
2014年~現職
2016~2017年リンショーピン大学(スウェーデン)客員研究員

研究者を目指したきっかけは?

教育学部にいたときに卒業論文・修士論文で取り組んだテーマが非常に面白かったので、専門的に学びたいと工学部で研究生として研究を続けました。ただただ研究への興味から博士課程に進み、学位を取りながら将来について考えるつもりでしたが、縁があって工学部の助手になりました。私の場合、明確に研究者になりたいと思ったのではなく、研究に夢中になっているうちに、ふと気づいたら研究者になっていましたね(笑)。

現在はどのような研究をしていますか?

計測やセンサをキーワードとした研究を行っています。一つは、植物の持つ環境認識能力をセンサとして利用するものです。植物に電極をつけて電圧(生体電位)を測ると光合成などの生理活性の反応を見ることができるので、植物工場などの施設栽培で植物の状態に合わせた環境制御方法としての活用を目指しています。もう一つは、味覚センサの開発です。味の評価だけでなく、飲料などの製造過程や劣化過程などの評価に利用することで、私たちの暮らしがより豊かになると考えています。

研究の面白いところとは?

私は電気電子分野に所属していますが、電気のイメージとはかけ離れた植物や食品をターゲットとしています。生体に関わるものは未知な部分が多く、未来を劇的に変える可能性があると言われています。また、世界人口が膨れ上がるなかで直面する食料問題とも結びつくため、他の分野の研究者や一般の方からも関心が集まっています。未来を変える力があ10る研究に携わっていることに、大きなやりがいを感じています。

研究をどのように社会に役立てていきたいですか?

この研究は、植物にとって最適な環境を作り出す画期的な技術であり、今後の食料不足を補うことや、栽培に適さない地域での施設栽培の効率化に寄与していくと確信しています。味覚センサの研究は、食品の品質向上と、個人の嗜好にあった食品の開発や評価が可能となり、食生活の質の向上につなげていこうと考えています。

今後のビジョンを聞かせてください。

現在の研究にとらわれず、新しいことにも挑戦したいです。語学に自信がなく、国際学会を敬遠している時期もありました。ところが、海外で共同研究をする機会を得てから、海外の学会に呼ばれるなど、人脈も視野も広がりました。何か新しいことを始めると、それだけ得られるものが大きいと実感しています。今後は、ビッグデータや人工知能などの情報処理、農学
や食品関連の勉強をして、研究の幅を広げていきたいです。

これから研究者を目指すあなたへ

研究者というのは、今は知られていない現象や技術を発見して、世界を変えてしまうかもしれない夢のある仕事です。ぜひ自分の興味のあることに積極的に飛び込んでみてください。残念なことに、電気電子システム工学科には女子学生はわずか数名、中心的な学術学会である電気学会にも女性研究者が数%しかいません。でも、社会から求められていることが多い分野で、女子学生や研究者にとって狙い目だと思いますよ(笑)。皆さんにはいろいろな分野に興味を持って、楽しい未来をゲットしてもらえたらと願っています。