「工学部なのにバイオ?」
理工学研究科 物理機能系専攻 機能材料工学コース 博士前期課程 (修士課程)

自己紹介

私は2015年に埼玉大学・工学部・機能材料工学科を卒業し、現在は埼玉大学大学院・理工学研究科・博士前期課程(修士課程)・物理機能系専攻・機能材料工学コースに進学しました。生体高分子工学講座に所属し、根本直人教授のご指導を受けて特に進化分子工学分野の研究をしています。進化分子工学を簡単に言えば、生物の中にあるタンパク質や核酸などの部品を組み替えてものづくりをすることです。そして、もう少し詳しく言うと、さまざまに組み替えた部品を連結し、その中から新しい機能をもった分子を選び出すことです。これを試験管内高速分子進化と言います。進化分子工学から生まれるものは、新しい反応を進める「酵素」、今まで区別が難しかった病気の「検査薬」、「治療薬」といったものがあります。

ここで、「工学部なのにバイオ?」という違和感を覚える方がいるかもしれません。私は工学部出身ですがバイオの研究をしています。もっと言えば「薬学部だけが製薬をやるわけではない」です。

また、私は高校生の時生物を専攻していませんでした。しかし、私が卒業した本学工学部機能材料工学科では「物理・化学・生物」を全て学ぶことから、生物の知識がつき、さらには理科が根本で繋がっていることを理解できました。そして、4年次の卒業研究で私はバイオ分野を選び、今に至っています。

これまでの歩み

私が中学生・高校生の時、何を考えてきたかについてお話します。まず中学生の時、私は国語が好きで、数学は好きではありませんでした。国語が好きな理由は幼いころから文字を読むことと書くことが好きだったためでした。当時はまだ将来やりたいこともはっきりしていなかったので、可能性を広げておこうと考えて大学へ進学できる高校に進学しました。

高校生の時も国語は好きなままでしたが、大きな変化がありました。それは「数学と物理を好きになったこと」です。数学の問題を解いている時、パズルがはまるように答えが導き出される感覚を味わい、それ以降高校数学を非常に楽しく感じました。物理については日常の現象を物理で説明できることが分かり、学ぶことが楽しくなりました。また、進路は「理系・工学部・大学院修士課程までの進学」を決意しました。理系を選んだ理由は「数学が好き、物理が好き」の2つで、工学部を選んだ理由は「ものづくりに興味がある」でした。そして修士課程までへの進学を決意した理由は「座学3年・研究3年」の学生生活を送りたいと思ったからです。大学4年間では「座学3年・研究1年」で学生生活が終わります。これでは座学に対して研究の比率が小さく、研究の面白さも座学をいかす機会も中途半端になると感じていました。そこで大学院修士課程まで進学することで座学と研究の面白さを味わい尽くすことにしました。

後輩へのメッセージ

今、理系に進もうと思っている人は、自分は「何をしたいのか」を考えてください。より詳しく言うと、「学部・学科名ではなく、研究内容」で進路を決めてください。例えば私の学科のように「工学部・機能材料工学科」でも「バイオ・製薬」ということもあります。薬を作りたいから薬学部、と安易に決めずに「何を研究している学科か」を基準に進路を選んでほしいと思います。

最後に、理系に進もうと思っている人も思っていない人も、本を読んでください。本を読むと自分で情報を得る力、得た情報をもとに想像する力、自分の頭で考える力がつきます。そしてこれらの力は何か新しいことをゼロから始める時に必ずあなたを助けます。忙しい毎日だと思いますが、毎日1ページずつでもいいので本を読んでみてください。

2016年11月19日 HiGEPS女性科学者の芽セミナーでの発表内容を編集