「強固で柔軟かつ持続的な国際連携基盤を築くために」
 大学院 理工学研究科 荒木 稚子

Q

  1. はじめに(自己紹介)
研究中のセラミックスの顕微鏡写真

工学部機械工学科に所属しています。専門は、材料力学・破壊力学という分野で、金属やセラミック、プラスチックなどの材料でできた「モノ」が、ある力を受けたときにどのように変形するか、どのように壊れるか、といった現象を扱っています。材料の変形・破壊現象を理解することではじめて、安全なモノづくりができるようになるため、機械系の学生にとっては必須の分野の一つです。

研究面では、エネルギー・環境分野で用いられる材料、特に燃料電池などに用いられるセラミックスに関する研究をメインに行っています。これらのセラミックスが、力を受けたときにどのように変形して壊れるのか、さらに、力を受けたときに電池性能などがどのように変化するのか、といったことについて、セラミックス中のイオンの動きに着目して研究を進めています。特に最近では、かたいセラミックスであるにもかかわらず、ある条件下で突然やわらかくなったり、ある日突然自然に壊れたりする材料の、不思議な変形・破壊現象に興味を持っています。

 

  1. 国際共同研究について
2005年冬のロンドン(当時の通勤路)

今回の国際共同研究では、インペリアルカレッジ(イギリス)とユーリッヒ研究所(ドイツ)の研究グループとともに、上述の燃料電池用セラミックスの不思議な現象の発現メカニズムの解明や複雑な挙動の評価法確立に取り組みます。

インペリアルカレッジは、大都市ロンドンのど真ん中に位置し、ハロッズや自然史博物館の近くにある大学です。一方のユーリッヒ研究所は、ベルギーとの国境近くに位置し、甜菜畑のど真ん中にある研究所です。非常に対照的な立地環境ではありますが、どちらも国際色豊かであり、世界第一線の研究者が集う刺激的な研究環境です。それぞれの研究グループに強みがありますので、今回は半年ずつ滞在して研究を進める予定です。また、共同研究期間中には、英・独・日間で人的な交流を行ったり、他の研究グループの教員や研究者との交流を図ったりすることによって、強固で柔軟かつ持続的な国際連携基盤を築くことができれば、と考えています。

 

  1. おわりに(メッセージ)

今回で3回目の長期在外研究になります。10年ほど前にインペリアルカレッジで1年間、5年ほど前にユーリッヒで約2年間を過ごしました。どちらも偶然訪問する機会があった際に、「いつか、ここでこの人たちと研究がしたい!」と強く思ったことがきっかけとなり、その後の在外研究や人的交流、さらに今回の国際共同研究につながりました。

在外研究は、渡航・帰国時に研究が停滞したり、短期間で成果を出さなければならないというプレッシャーがあったりもしますが、現地で得られる経験は何ものにも代えがたく、特に若い先生方には、ぜひ機会を見つけて積極的に挑戦していただき、国際的に活躍することによって、埼玉大学ひいては日本をもり立てていただきたく思います。

2012年春のユーリッヒ(当時の通勤路)

おわりに、在外研究で日本にいない間、多大なご迷惑をお掛けすることになるにも関わらず、ワガママな私を寛大な心で送り出して下さる周りの先生方に深く感謝いたします。