夏休みの自由研究では「植物採集」や「カビの研究」をやりました。
 大学院・理工学研究科・教授 川合真紀

私の研究

植物の環境ストレス応答のメカニズムの解明と、植物の物質生産能力を向上させる為の研究を、分子生物学や植物生理学の手法を用いておこなっています。
地球上には、様々な特性をもった植物種が存在しています。植物が生存戦略として獲得した環境ストレス耐性の能力を明らかにし、得られた知見を人の生活に役立つ性質を持った作物の分子育種に活かして行きたいと考えています。つまり、植物の体の謎を解き明かして、人の生活に役立てることが研究の究極の目標です。そのために、モデル生物であるイネやシロイヌナズナ、藍藻等を研究対象として、環境ストレス応答や光合成代謝の研究に取り組んでいます。近年は、社会にすぐに役立つ応用研究が求められる傾向が強まっていますが、そのためには、基本的な生物の体のメカニズムが解明されていなければなりません。基礎研究を大事にしつつ、応用研究にも取り組んで行きたいというのが私の研究のスタンスです。

これまでの歩み

ポスドク時代にテキサス大学オースチン校に10ヶ月お世話になりました。その研究室の主催者であるDr. Mona Mehdyと息子のGalen君。子育ても研究も自然体でこなしている姿にパワーをいただきました。昨年、Galen君は大学を卒業したそうです。

小学生の頃から生物が好きで、夏休みの自由研究では「植物採集」や「カビの研究」をやりました。両親とも理系(薬学系)で、妹弟も理系(薬学と農学)に進んだことから見ると、自ずと自然科学に親しみを持つ運命の家庭環境に育ったということかも知れません(笑)。興味のままに、大学は理学部の生物系に進みました。今の自分を決定づける運命の分かれ道がいつだったのか考えると、大学4年生の時、「合格したら大学院に進学して良い」と親が言ってくれた事が一つのターニングポイントでした。生物系は理系の中でも女性の割合が比較的多い分野です。颯爽と白衣を翻して、教授と堂々とディスカッションする女性の先輩の姿を間近で見ることができたことも、「研究の道に進みたい」と思うきっかけであった様に思います。

実験に何度も失敗したり、学会発表の場で緊張して声が上ずってしまったり、研究論文が採択された時には大喜びしたりと、一喜一憂を繰り返した大学院生活でしたが、無事に博士の学位を修得することができました。その後、国内の研究機関やアメリカの大学でポストドクター(PD)や助教として研究を続ける機会を得(その間に結婚、出産しました)、埼玉大学に准教授として採用されて自分の研究室を持つ事になり、今に至ります。あの時、大学院に進学していなかったら全く違った人生を歩んでいたに違いない、と思うと不思議な気持ちですね。

伝えたい事

ドラマや小説に出てくる典型的な理系研究者というと「色白で眼鏡をかけた白衣の堅物」というイメージになっていませんか?研究生活というと一人で研究室にこもって黙々と実験をしているイメージを持っていませんか?そういう人もいますが(笑)、実際のところ、研究は一人で引きこもってやるものではありません。指導教員や研究室メンバーと意見交換をして自分の考えをアピールしたり、得られた研究成果を学会で発表し、学術誌に論文を書いて報告します。時には、共同研究先の大学や企業に実験装置を借りる交渉をしたり、国際会議に出席して英語で発表することもあります。ですので、国語や英語が苦手なので理系というのは、あとで苦労することになりそうです。私自身もまだまだ自己研鑽の途中ですが、コミュニケーション力は何よりも重要だと痛感しています。また、これは理系文系に関わらず共通して言える事だと思いますが、常にポジティブ思考でいることは大事です。一度きりの人生、後から思い返して後悔することが無いように、やりたい事に挑戦してみてください。