「先入観を持たずに色々な分野を覗いてみてほしい」
 大学院 理工学研究科生命科学部門 准教授 津田佐知子

私の研究

私たち脊椎動物の脳は複雑な形と機能を持っていますが、これらが成長の過程でどのように作られるのか、そのしくみについて熱帯魚ゼブラフィッシュを用いて研究を行っています。ゼブラフィッシュは、体が透明で、生きたまま容易に細胞の動きや神経活動の観察などができるなど、発生生物学や神経科学に適したモデル生物です。現在は、大脳・中脳・小脳といった脳の領域ができる時期に見られる、細胞集団の多彩でダイナミックな移動や、神経細胞が特定の集団(神経回路)を作って活動を始めるしくみについて、特に小脳に注目し、光技術や生理学、行動実験を組み合わせて研究を行っています。

これまでの歩み

基本的に基礎科学研究に携わりたいと思いながら歩んできたように思います。大学入試では、基礎医学も考えましたが、教養課程で広く学んだ上で専門課程に進める東京大学理科二類を受験しました。教養課程で徐々に発生生物学に興味を持ち、発生を含む多様な現象や生物種について学べる理学部生物学科動物学課程に進学しました。学生実習で様々な動物の特色ある現象に触れましたが、中でも新設の動物発生学研究室(武田洋幸教授)の実習で観察した小型魚類(ゼブラフィッシュとメダカ)の透き通った体の美しさとその可能性に惹かれ、武田研で博士後期課程まで過ごしました。武田研はとても自由な気風で、興味の赴くままに神経発生の研究ができ、試行錯誤しながら自分なりの研究テーマを作っていく面白さを学びました。辛抱強くその機会を与えて下さった武田先生に心から感謝しています。博士号取得後は脳の機能解析を行いたいと思い、神経生理学や光技術の専門家のProf. George Augustine(Duke-NUS Graduate Medical School Singapore)の研究室に留学しました。普段はSingapore、夏はボストン近郊のWoods Hole海洋生物学研究所に滞在し、世界各地から集まってきている研究者と共に研究を行うという刺激的な経験でした。新たに学んだ視点や方法を用いて発生生物学に改めて取り組みたいと考えていたところ、埼玉大学のテニュアトラック助教に採用して頂き、今に至っています。

後輩へのメッセージ

皆さんには沢山の可能性があります。まずは先入観を持たずに色々な分野を覗いてみてほしいと思います。その中で好きなこと、面白そうなことを見つけたら、とにかく進んでみると良いと思います。そして一度目標を決めたら、楽ではないことがあっても、それを追い続けることです。一見回り道のようであっても、道は案外目指す方向へ、時には思いもよらぬ展開へ続いていくように思います。私はまだ研究者として道半ばですが、目前のことに一生懸命取り組んでいると、有難いことに様々な方にご指導やご支援を頂き、いつの間にか道が開けますし、またそう信じて日々を過ごしています。
今後皆さんは迷うことが多々あるかと思いますが、面白そうだと思う方向へ思い切って挑戦してみて下さい。