電気化学的な非線形現象

電気化学的な界面は散逸構造の宝庫である。これは、ここが物質とエネルギーが交代する開かれた反応場だからである。我々が手がけた、幾つかの空間規則的なパターンを図1-3に示す。図1は、100μmのギャップを電解液で満たし電気化学的なRB対流を駆動した結果(レーザー干渉像)と、その計算シュミレーションである。計算結果は、非線形流体力学を電気化学境界条件のもとで解いて得た。図2は、銀とアンチモンを同時に電解析出させると、電極表面にできる10μmサイズの模様である。あたかも、蚊取り線香のような幅一定の螺旋波が、電極表面を動き、衝突と干渉を繰り返すダイナミクスを眺めることができた。図3は、典型的な2次元フラクタルである。これは、お互いに混じり合わない油と水との界面に、金属亜鉛を局在析出させて作った。

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これらの絵に描いたような空間模様は、はじめは応用の方途がほとんど無いと思っていたが、最近、2次元フラクタルの衝突を利用して、電気伝導度が量子化される量子金属接点が簡単にできることを見いだした。また、規則化対流の実験が、大気循環モデルを扱っている人たちの興味を引いた事もあった。この問題は、さらに発展して、現在では、磁場中の電解液のMHD運動を利用すると、積層電解容器の反応効率が著しく向上することが明らかとなり、工業的な応用を目指して、企業との共同研究を進めている。とは言うものの、図1-3は、解析主体の博物学的な仕事と言わざるを得ない。これらの仕事を通して、我々は、「複雑系の文法」を身に付けることができたが、同時に、応用の可能性のある「リアリティ」を当該分野に持ち込みたく強く願った。

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複雑系のリアリティ その3

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