研究概要

 植物が持つ様々な有用な機能をより効率的に利用するために、個々の遺伝子の機能を知ることが重要です。植物においては転写レベルの制御を行う「 転写因子 」が、多くの現象のキーレギュレーターとして機能しています。当研究グループでは、植物転写因子の研究の国際的基盤となっている重要技術「キメラリプレッサー遺伝子サイレンシングシステム(Chimeric Repressor gene Silencing Technology:CRES-T法 )」を開発しました。

 CRES-T法に加えて様々な解析技術を駆使することで、多様な転写因子の機能を解析、各々の転写因子が制御する多様な植物現象のメカニズムを解明し、その学術的な知見を応用につなげることで、人間社会の発展に貢献することを目的としています。これまでにシロイヌナズナおよびイネの転写因子の機能のデータベース化を進め、花粉の飛散を抑制した多弁咲きのシクラメンや植物工場適正の矮性タバコなど植物の基礎的研究を社会で役立つ実用的技術へと育て上げることに成功してきました

 

現在の研究テーマ

植物種子(胚・胚乳)発生関連転写因子の解析と応用

 受精を行わずに種子を形成する現象は「アポミクシス(無融合生殖)」として、これまでに400種類におよぶ植物で見つかっていますが、穀物では見つかっていません。アポミクシスを人為的に誘導できればF1ハイブリッド有用形質の固定が可能になるなど、育種革命をもたらす技術となります。

 当研究室では、シロイヌナズナ転写因子キメラリプレッサーライブラリのスクリーニングから、人為的アポミクシス誘導に関わる因子を同定しました。現在これらの因子による人為的アポミクシス誘導の実現を目指しています。

植物細胞の分化全能性制御機構の解析と応用

 分化全能性は、受精卵や生殖細胞がもつ、個体を構成するあらゆる細胞に分化し、最終的に一個体を形成することができる能力です。

 当研究室では、シロイヌナズナ転写因子キメラリプレッサーライブラリのスクリーニングから、不定組織形成を指標として、分化全能性を制御する新規転写因子を同定し、いくつかの候補因子を見出しました。中でも、CR117は強力な不定組織形成能を有していることから、現在その機能解析を進めています。