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実施の目的PURPOSE OF THE PROGRAM

昨年3月の福島第一原子力発電所の事故以来,全国的に子どもも大人も「放射線」に関して正しく理解したいと強く思うようになりました。学校においても,文部科学省が昨年10月に小中高校生と教員向けに放射線副読本を作成し配付するなど,知識の補強に努めてきました。
 しかしながら,理科を教える殆どの教員は,これまで放射線について科学的理解を深めるために必要な実験や実習を伴う学習や研修を経験していません。理解が不十分にもかかわらず,放射線と放射能,放射性物質の違いを始め,γ線とその測定,ベクレルとシーベルト,自然放射線と人工放射線,内部被ばくと外部被ばく,放射線の遮へいと除染,放射性同位体セシウム137とその半減期,低線量放射線の健康リスクなど,子どもたちや保護者のさまざまな「知りたい」気持ちに応えなければならない状況です。
 また,福島県を始め多くの地域の農業や水産業の関係者が,現在,放射能汚染に苦しんでいます。国が定めた安全基準以下であっても,消費者の不安は拭えず,いわゆる風評被害が広がっています。被災地のがれきの処理も,放射能への不安から進まない現状です。こうした混乱の背景には,大半の国民が放射線に関する科学的知識を持ち合わせていないために過剰な不安を引き起こしていることが関係していると考えられます。今後,放射性物質の除染作業が進展することが期待されますが,同時に,子どもたちへの教育を通じて,社会全体の放射線や放射能除染に関する科学的な理解を深める努力が重要になります。
 そこで,JSTサイエンス・リーダーズ・キャンプ事業の支援を受けて,全国各地の中学高校で理科教育のリーダー的役割を期待されている教員の方々を対象として,放射線に関わる諸問題に対する科学的理解を深めるための合宿研修会を実施することにいたしました。
 プログラムでは,福島県における現地視察を通じて,これまでの理科教育の知識では理解が難しい放射性物質の拡散の科学的背景,除染作業の実際,地震と大津波の被害状況について学ぶとともに,埼玉大学の科学研究施設を利用して,放射線に関わる科学実験を体験することで専門的知識を習得し,中学・高校での今後の理科教育活動に反映することをねらいとしています。放射能の汚染や除染に関する最先端の研究状況の紹介や,福島県立福島高校(SSH指定校)での高校生による放射線に関する研究発表,福島県郡山市明健中学校における放射線教育の実践発表なども予定しています。
 意欲的な先生方にご参加頂き,研修成果を全国で生かしていただけることを期待しています。



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