植物の成長に重要な糖タンパク質の研究                                                              


原 克弥


アラビ ノガラクタン‐プロテインとは何か?

 植物の細胞は、その外 側を細胞壁に囲まれています。この細胞壁は、セルロースに代表される様々な多糖によってできており、植物の体を支えたり、外敵の侵入を防 いだりしています。アラビノガラクタン-プロテイン (AGP) は細胞壁に存在する、タンパク質と糖でできた植物特 有の糖タンパク質です。AGPは植物細胞の成長や分化に重要であ ることが分かっています。また、AGPの働きには糖鎖が重要です。 しかし、AGPの糖鎖のどの構造が重要か、糖鎖は どのように働くのか、についてはよく分かっていません。

AGPを分解す る酵素

 AGPの糖鎖機能を調べるためには、糖鎖 を分解する図のような「はさみ=酵素」を使います。この酵素は、元 々キノコやカビが細胞壁を分解して植物に侵入するために持っているものです。酵素は種類によって切る場所が異なります。AGPを分解する酵素はこれまでに様々な種類が見 つかっており、これらの酵素を使い分けることでAGPの糖鎖を自在に分解できます。

どうやって調べる?

  シロイヌナズナという植物で酵素の遺伝子を働かせ、植物体内でAGPを分解します。AGPを分解した植物と分解していない植物で、細胞の大きさや形を比べま す。分解する場所の異なるいくつかの酵素の遺伝子を入れた植物でこの実験を行い、糖鎖のどこの構造が壊されたときに植物の成長に影響が出るのかを調べま す。

 また、成長に影響が出た場所や成長段階を詳しく調べていくことで、AGPがいつ、どこで、どんな働きをして いるのかを調べます。



● これまでの結果と今後の展望

 上の図の糖鎖の主鎖部分を分解す る酵素を働かせると、胚軸の成長が悪くなることが分かっています。現在はその植物について、なぜ成長が悪くなったのかを詳しく調べています。また、他の種類の酵 素 (上の図の糖鎖の側鎖部分やを分解する) を働かせ た場合と比較する実験も行っています。今後、これらの植物の成長についても調べていくことで、まだ知られていないAGPの糖鎖の重要な構造を明らかにできるかもしれ ません。

<素材提供>

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