シロイヌナズナのb-L-アラビノピラノシダーゼの性状解析

今泉 知枝美


■アラビノガラクタンプロテインとは? 

 アラビノガラクタンプロテイン (AGP) とは糖とタンパク質からなる物質で、植物の成長や発達に重要であると考えられています。AGPは様々な糖が結合した糖鎖とよばれるものをもちます。糖鎖から糖を切り出す「はさみ = 酵素」によって、AGP糖鎖の構造は変化しています。しかし糖鎖は末端の糖からしか切ることができないため、糖鎖末端の分解はAGPにとって重要です。

AGPの糖鎖にはアラビノピラノース (Arap) とよばれる糖が含まれています。このArapは糖鎖の末端に存在し、アラビノピラノシダーゼ (Arapase) とよばれる酵素によって切り出されます。

AGP糖鎖




Arapaseは微生物や植物などに存在しますが、植物でははっきりとした役割がまだわかっていません。私はArapaseの植物の役割について、シロイヌナズナを用いて調べています。



Arapaseの働きをみるには?

 Arapaseの働きをみるために、パラニトロフェニル (pNP) とよばれる物質にArapが結合したpNP糖というものを使います。

 ArapasepNP糖を混ぜるとArapase の働きにより結合が切れると、pNPは黄色くなります。















■実験内容  

@活性測定

シロイヌナズナにおいてアラビノピラノシダーゼ遺伝子を欠損した変異体やArapase遺伝子を過剰に働かせた過剰発現体のシロイヌナズナをすりつぶし、Arapaseの働きの強さ (=活性) pNP糖を用いて調べています。Arapaseの活性が高いほどpNPArapの結合は切られるため色は濃くなります。野生型に比べ変異体では活性が弱く、過剰発現体では活性が高いことを確認しました。


A組換え酵素の精製

ピキア酵母菌にArapaseをつくらせ、クロマトグラフィーとよばれる手法によって酵素を精製します。精製されたArapaseがどのような条件で、またどの糖に対して働きやすいのかを調べています。



B植物体の成長

 シロイヌナズナでアラビノピラノシダーゼ遺伝子を欠損させた変異体ではArapase活性が弱くなり、過剰発現体では高くなることが分かりました。この変化が変異体と過剰発現体の根や茎の成長に影響しているか調べています。通常の生育環境下での成長を観察するだけでなく、塩ストレスを与えた場合の成長や顕微鏡を使用し胚軸の長さなどの観察を行っています。



■まとめ  

AGPの糖鎖の構造は非常に複雑であり、酵素の働きによって変化します。シロイヌナズナのArapaseAGP糖鎖のArapを切ることで、植物の成長や代謝に何らかの影響を与えていると考えられます。



■使用素材

http://www.wanpug.com/

http://www5.ocn.ne.jp/~wanpagu/