オオムギ胚乳細胞壁のβ-1,3:1,4-グルカン合成酵素と糖ヌクレオチド代謝

β-グルカンとは??●

 β-グルカンとは細胞壁を構成する多糖類の一種で、グルコースという単糖がいくつもつながってできています。β-グルカンはオオムギ、イネ、コムギなどの細胞壁を構成していますが、オオムギにはイネやコムギと比べて5倍も多く含まれています。さらに、β-グルカンは食物繊維なので、β-グルカンを多く含む大麦粉は健康に良いと注目されています。



●研究内容●

 @β-グルカンの量はオオムギの品種によって違うのか??

私の研究では、様々なオオムギ品種のβ-グルカン含量を調べています。まず、オオムギから取り出したβ-グルカンを酸によってグルコースに完全にバラバラにします。HPAEC-PADという方法で分析すると、このグルコースがどのくらいあるのか、つまりどのくらいβ-グルカンがあるのかわかります。β-グルカンが一番多い品種は一番少ない品種の10倍もあることがわかりました。


Aβ-グルカンはどうやってできるのか??

β-グルカンはβ-グルカン合成酵素のはたらきでUDP-グルコースという原料からつくられます。UDP-グルコースのグルコース部分が次々とつながりβ-グルカンになります。この酵素の遺伝子(CslF)が壊れたオオムギでは、β-グルカンがほとんど含まれていないことがわかりました。




BUDP-グルコースはオオムギの中にどれくらいあるのか??

Aで紹介したようにUDP-グルコースはβ-グルカンの原料です。オオムギをすりつぶしてUDP-グルコースを取り出し、HPLCという機械で量を測ります。




 CUDP-グルコースはどうやってできるのか??

UDP-グルコースはスクロース合成酵素のはたらきでスクロースという原料からつくられます。スクロースはグルコースとフルクトースがつながってできています。スクロースのグルコース部分がUDPとつながりUDP-グルコースになります。



●まとめ●
  現在、β-グルカンの多いオオムギ品種と少ないオオムギ品種で
β-グルカン合成酵素、UDP-グルコースの量、スクロース合成酵素の違いを調べています。
 この違いがわかると、将来、より多くのβ-グルカンを含むオオムギ品種を作れるかもしれません。