hana1植物の病害応答反応におけるAGP糖鎖のシグナリング分子としての役割hana2

                                                                                                                                 芝野 誠二                                         


○病害応答とは?

 植物は動物とは違い、病原体である菌類やウイルスに対する免疫を持ちません。一方で植物には病原体が侵入してくる時に
発生する分子を感知し、それ以上感染しないようにする働きがあり、これを病害応答と呼びます。この分子の
1種に、病原体
や植物の細胞壁から生じるオリゴ糖があります。

Fig. 1


AGP (アラビノガラクタン-プロテイン) って何?

 AGPは植物の細胞壁に特有の糖タンパク質で、糖鎖部分が細胞どうしの情報伝達の役割をもつことが知られています。病原体
によって
AGPが壊されると、断片 (オリゴ糖) が病原体の侵入を知らせるシグナルとして働く可能性があります。このオリゴ糖を
見つけて糖鎖構造を決定することが、私の研究目的です。



◆実験内容

@AGP由来オリゴ糖の分画と精製

 AGPの糖鎖を分解する酵素でオリゴ糖を生じさせ、クロマトグラフィーによって分画します。クロマトグラフィーとは、
オリゴ糖をイオン的な性質や分子の大きさによって分ける手法です。

Fig. 2


A植物のAGPオリゴ糖による遺伝子発現変化

 病害応答では活性酸素や抗菌物質が作り出されます。精製したオリゴ糖をイネやシロイヌナズナなどの植物に与えた後、
これらの産生に関わる遺伝子の発現を調べることで、オリゴ糖に病害応答を引き起こす役割があるか確かめることができます。
Fig. 3


□今後の取り組み

 病害応答に関わるオリゴ糖がある程度特定できたら、分析機器を用いてオリゴ糖の糖鎖構造を調べていきます。また、糖鎖
の末端を「削る」酵素でオリゴ糖の構造を一部変えた時に、病害応答が起こるか確かめる実験も有効だと思われます。