<アラビノガラクタン-プロテイン糖鎖の生理機能>

 

○アラビノガラクタン-プロテイン(AGP)とは?

 AGPは植物の細胞壁に含まれる糖タンパク質です。AGPには成長や発達など様々な役割が知られていますが、生理機能の一つとして病原菌に対抗する防御反応に関係していることが考えられます。

 

○植物の防御応答

 動物は体内に入り込んだ自分とは異なる異物を排除する免疫を持っていますが、植物はこのような免疫系を持っていません。では、どのようにして植物は病原菌から身を守っているのでしょうか?

 植物は2種類の方法で病原菌を探知します。1つ目は、病原菌自身の細胞壁から生じるオリゴ糖を検知する方法です。オリゴ糖を検知すると、病原菌に対する抗菌物質の産生や、感染を広げないための自己細胞死(アポトーシス)などの防御反応を起こします。

2つ目の方法では、病原菌が植物に侵入する時に細胞壁を壊し、その時生じる物質が植物細胞に病原菌が侵入したことを知らせる役割をします。その情報を受けて、植物細胞は病原菌に対抗する防御反応を開始します。その情報としてAGPが使われている可能性があります。





○実験内容

 もし仮説が正しければ植物はAGPのオリゴ糖を検知して病害反応を開始するはずです。それを調べるために二つ実験を行っています。

 

・実験1. 大豆切片、インゲン胚軸を用いて抗菌物質を薄層クロマトグラフィーで観察

AGPのオリゴ糖が植物の防御反応に関わっているならば、このオリゴ糖を添加することで植物は抗菌物質を産生するはずです。薄層クロマトグラフィーを使用して抗菌物質を観察することで防御反応に関わっているかを調べています。

 

・実験2. イネ培養細胞を用いた活性酸素測定と遺伝子発現変化の比較

イネ培養細胞にAGPのオリゴ糖を与えた時と与えていない時の活性酸素の量を比較します。活性酸素は植物の防御反応の初期段階で産生されるため、AGPのオリゴ糖を添加したイネ培養細胞のほうが多くの活性酸素を産生していたら、防御反応が起こっていると考えられます。さらに、この2種類の培養細胞を用いて防御反応に関わると知られている遺伝子の発現変化についても調べています。