エノキタケ由来のAGPコアタンパク質分解酵素の精製と性状解析                                                              

アラビノガラクタン‐プロテイン (AGP) とは?

 植物の細胞は、様々な糖やタンパク質からできた細胞壁で囲まれています。私たちが普段使っている紙は、細胞壁主成分のセルロースと呼ばれる糖からできています。AGPも植物細胞壁の成分の一つですが、糖部分とタンパク質部分でできています。AGPは、私たちの身近ではアラビアゴムなどとして粘り気を与える食品添加物などに使われています。最近、AGPは植物の成長や分化に関わるなど重要な働きを担っていることが分かってきましたが、まだ解明されていない機能もたくさんあります。

AGPを食べるエノキタケ

 エノキタケなどのキノコは植物を食べて生きています。この時、キノコは細胞壁を酵素と呼ばれるはさみで分解しています。酵素には様々な種類があり、壊したい成分によって使う酵素は異なります。これまでに、AGPの糖部分を切る酵素は多数見つかっていますが、AGPのタンパク質部分を切る酵素はまだ見つかっていません。この新種の酵素を見つけることが私の研究の目的です。



どうやって欲しい酵素だけを集める?

①エノキタケをAGPの入った液体の中で育てます。エノキタケはAGPを食べるために糖部分を切る酵素やタンパク質部分を切る酵素をたくさん出します。

②エノキタケを育てた液体を集めます。この中には色々な酵素が混ざっていますが、AGPのタンパク質部分を切る酵素だけを精製します。酵素の精製には、クロマトグラフィーと呼ばれる方法を使います。

③クロマトグラフィーを何段階も行うことで、酵素の混合物からAGPにタンパク質部分を切る酵素だけを集めることができます。

    

☆クロマトグラフィーとは?

クロマトグラフィーは、樹脂を詰めたガラス管に物質の混合物を流し込むことで、物質を分ける実験手法です。分け方は、樹脂の種類で変えることができます。物質の大きさ (ゲルろ過クロマトグラフィー) や電気的な性質 (イオン交換クロマトグラフィー) など様々な特徴で分けるクロマトグラフィーが存在します。




●これまでの結果は…

 これまでAGPのタンパク質部分を切る酵素を途中まで精製しました。完全精製した後は酵素のアミノ酸配列から、エノキタケの遺伝子をとり、さらに、組換え技術を用いてこの酵素を大量に作ることができます。AGPのタンパク質部分を切る酵素は、AGPの糖部分を作るツールとして利用できます。さらに、植物自身にこの酵素を多く作らせることで、AGPを持たない植物を作ることができ、AGPのさらなる機能の解明が期待されます。

<素材提供>

http://www.printout.jp/clipart/index.html

http://www.wanpug.com/illust43.html

http://kids.wanpug.com/illust25.html

http://www.ushichiko.com/free-sozai3.html