アラビノガラクタン-プロテイン単一分子種の単離と糖鎖構造解析
アラビノガラクタン-プロテインとは?
アラビノガラクタン-プロテイン (AGP) とは植物に含まれる物質で、糖とタンパク質で構成されています。AGPは植物の成長や発達で重要な働きをしていると言われていますが、その詳しい機能については分かっていません。また、AGPは機能性食品としても注目されており、免疫力の向上やアルツハイマー病の予防などに役立つ可能性も指摘されています。AGPは糖が全体の90%以上を占めているため、AGPの機能にはその糖部分が重要だと言われています。私はAGPの機能の謎を解くために、糖部分の構造の解明に取り組んでいます。
シロイヌナズナは実験によく用いられる植物で、85種類ものAGPがあると考えられています。しかし、生きた植物から1種類のAGPのみを取り出すことは困難で、未だ誰も1種類のAGPを取り出して糖部分を分析することができていません。そのため、AGPの種類ごとの機能や糖部分の構造の違いが解明されていません。そこで、私はシロイヌナズナから1種類のAGPだけを取り出して、そのAGPの糖部分の構造を明らかにしたいと考えています。取り出す1種類のAGPは、シロイヌナズナの中で合成量が多いAGP1にしました。
グルタチオン-S-トランスフェラーゼと連結したAGPを合成する植物
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST) とはタンパク質の一種で、グルタチオンという物質と結合する性質を持っています。タンパク質は遺伝子を元につくられます。そこでまず、AGP1がGSTと連結したAGP1-GSTを合成できるような遺伝子をつくります。これを植物に遺伝子導入することで、その植物はAGP1-GSTを作るようになります。私は、このようにして作製されたAGP1-GSTを合成するシロイヌナズナを用いて実験しています。
実験内容
最初にAGP1-GSTを合成する植物をすりつぶして、抽出液を作ります。抽出液には様々なAGPが混ざっていますが、グルタチオンの付いたビーズに触れると、AGP1-GSTだけがグルタチオンの付いたビーズに結合します。一方で、他のAGPはグルタチオンに結合しないので、AGP1-GSTだけを取り出すことができます
(下図) 。
まとめ
1種類のAGPのみを取り出し、糖部分の構造を分析できれば、様々な種類のAGPの糖部分の構造を比較できるようになります。そして、どのAGPのどんな糖の構造が、どのような機能を持つのかが明らかにできると考えています。糖部分の構造と機能の関係性を明らかにできれば、AGPの機能を高めたり、変えたりできるかもしれません。