アラビノガラクタンプロテインが細胞成長に果たす役割の解明

 植物糖鎖生物学研究室 角田 帆乃花      


〇植物細胞のつくり

  植物の細胞には、外側に細胞壁と呼ばれる組織があります。この細胞壁は植物細胞の保護や形状支持に役立ち、また成長に重要です。細胞壁は主にセルロースと 呼ばれる糖からできており、セルロース合成酵素によって作られます。また、細胞壁にはほかにも様々な成分があり、私はその中でもアラビノガラクタンプロテ イン(AGP)という成分に注目しています。
 AGPはタンパク質に糖がついた糖タンパク質と呼ばれる物質で、細胞膜の細胞壁側に存在しています。 AGPは発生や成長などに関与する重要な物質で、この機能を阻害する試薬(Yariv試薬)を加えると細胞の形がおかしくなり、植物の成長が悪くなってし まいます。このことから、AGPは細胞壁、特にセルロースと何らかの関わりがあるのではないかと考えられていますが、詳しいことはわかって いません。そこで私は、AGPとセルロース合成の関係に注目して研究を行っています。




〇Yariv試薬

 AGP の機能を阻害するYariv試薬を加えて植物を育てると、植物の根はYariv試薬の濃度が濃くなるにつれてだんだん短くなっていきます。下の写真はシロ イヌナズナをYariv試薬を含まない培地、薄い濃度のYariv試薬を含む培地、濃い濃度のYariv試薬を含む培地で5日育てた時の植物の写 真です。この写真から、AGPの機能が根の成長に重要であることがわかります。


〇セルロース合成

 セ ルロース合成酵素はいくつかの酵素が集まった複合体となって細胞膜上にあり、この中ではセルロース合成酵素複合体とともにKOR1と呼ばれるセ ルロースを分解する酵素が働いています。KOR1の機能がなくなった変異体をYariv試薬で処理すると、意外にも成長があまり悪くならないことが最近わかりました。このことから、AGPの機能はKOR1の機能と関係 があるのではないかと推測されます。