セミナー・集中講義
当研究室で行うセミナー・集中講義の予定を掲載します。随時更新中...
2024年度
題名:Applications of Quantum Computation to Quantum Field Theory
- 日時:2024年12月19日(水) 14:40-15:40
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:本多 正純 氏(理化学研究所)
- 概要:量子計算の場の量子論の数値シミュレーションへの応用について、overview的な解説を行う。 まず量子計算の基礎的な部分を解説した後に、量子計算のスピン系のシミュレーションへの応用について議論する。 その後、連続的場の量子論のシミュレーションへの応用や将来の展望について議論する。
題名:弦の散乱における実時間の遅れとブラックホールからの放射
- 日時:2024年10月30日(水) 16:00-17:00
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:世田 拓也 氏 (京都大学)
- 概要:弦の散乱振幅は通常、発散する形式的積分表示で与えられ、特殊な場合を除き解析的な表示は知られていない。 そのため散乱振幅の値を実際に評価するためには、積分路を取り直し適切に解析接続を行う必要がある。 近年はその積分路の便利な取り直し方が提案され、ツリー・1ループレベルでの多点振幅の数値評価が可能となってきた。 本発表ではこの新たな手法を用いて、弦の散乱振幅における実時間の遅れや、弦を模した多重ループダイアグラムの振幅の評価を行う。 またその応用先として、ブラックホールからの放射の時間発展に注目することで、ホーキング放射からのずれを予言できる可能性について議論する。
題名:超共形指数の giant graviton 展開
- 日時:2024年9月24日(火) 16:00-17:00
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:今村 洋介 氏 (東京工業大学)
- 概要:超共形指数は分配関数の一種であり、超対称理論の非摂動的性質の解析に用いられる。 本講演ではAdS/CFTのゲージ理論側と重力側それぞれにおける超共形指数の計算法の概要を説明したうえで、AdS側での有限のNにおける補正が giant graviton と呼ばれるブレーンの寄与として与えられることを見る。
題名:Double Holography of Entangled Universes
- 日時:2024年9月10日(火) 5時限 (1620-17:50)
- 場所:理学部講義実験棟2番教室
- 講師:宇賀神 知紀 氏 (立教大学)
- 概要:2つの非連結な2次元宇宙が、両者の間の量子相関を強くしていくことによりつながる現象を、3次元エターナルBTZブラックホール上に置かれた二枚のブレーンのダイナミクスを用いて、二重ホログラフィーの観点から調べる。 BTZブラックホールに対応するTFD状態の温度に応じて、2つの種類のブレーンの配位があり、これらの間の相転移は、二つの量子相関する宇宙を接続するアインシュタイン-ローゼン橋の出現と自然に同一視される。 またこのホログラフィーの枠組みを通じて、二つのブレーン上の宇宙の量子情報構造を、左と右の境界理論に存在する欠陥間の相互情報量を計算することで調べる。 さらに、ブラックホール内部からホーキング放射への情報の流れのモデルであるハイデン-プレスキル過程がこのセットアップで自然に実現されることを議論し、ブラックホール内部の再構成写像である吉田Kitaevプロトコルの解釈について述べる。
集中講義:ブラックホールのエントロピーと量子情報理論の関係
- 日時:2024年9月9日(月) 2-5限, 10日(火) 2-4限 (2限 10:40-12:10, 3限 13:00-14:30, 4限 14:40-16:10, 5限 16:20-17:50)
- 場所:理学部講義実験棟2番教室
- 講師:宇賀神 知紀 氏 (立教大学)
- 概要:ブラックホールの幾何学的性質とこの時空上の場の量子論の基本的性質を踏まえ、ブラックホールが量子論的な放射を出していること、またそれに伴い徐々に質量を失っていくこと(ブラックホールの蒸発)を理解する。 さらにホーキング放射のエントロピーがブラックホールの蒸発に伴い、どのように時間発展するのか(いわゆるPage曲線)を理解する。 次にAdS/CFT対応の基本事項を踏まえ、ホーキング放射のエントロピーを計算する公式であるアイランド公式を導出し、Page 曲線が現れることを議論する。
特別講義:物理好きのためのニューラルネットワーク入門
- 日時:2024年8月28日(水), 29(木), 30(金) 各日 10:30-12:00, 13:30-15:00, 15:30-17:00
- 場所:理学部講義実験棟1番教室
- 講師:村田 仁樹 氏 (埼玉工業大学)
- 概要:ニューラルネットワークに関する入門的な講義を行います。ニューラルネットワークの定義に始まり、勾配降下法や誤差逆伝播法など学習に関する重要なテクニックを学び、畳み込みニューラルネットワークについて学びます。 時間があれば物理への応用についても話します。数式を使って板書しながら進めますので、物理学を学んできた人にとっては馴染みやすい形になると思います。
Anomalous magnetic moments of leptons: an overview of recent progress
- 日時:2024年7月25日(水) 13:30-14:30
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:仁尾 真紀子 氏 (理化学研究所、埼玉大学)
- 概要:The anomalous magnetic moments of the electron and the muon, g-2 in short, have been the cornerstones for several decades to test the validity of the standard model (SM) of elementary particles. For this severe verification to be possible, the g-2 values must be measured with high precision and the theoretical values must be calculated from SM with the same accuracy as the experimental values. Our QED calculations of the lepton g-2 are part of the SM calculations and essential because the electromagnetic interaction governs more than 99.99% of the g-2 values. In this talk, I briefly summarize the current status of the electron g-2 and muon g-2.
題名:摂動的超弦理論と行列模型
- 日時:2024年7月3日(水) 16:00-17:00
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:浅野 侑磨 氏 (筑波大学)
- 概要:超弦理論は量子重力を実現する理論として提案されており、実際、通常の場の理論で問題となる紫外発散が現れないことが分かっている。 しかしながら、現在確立している超弦理論の定式化は摂動論に基づいており、ブラックホールなどの非摂動的な物理を満足に記述できない問題を抱えている。 本講演では、この問題を解決すると期待されている行列模型に焦点を当て、超弦理論の非摂動的定式化を議論する。 特に、超弦理論の作用である南部後藤型作用、Schild型作用、Polyakov型作用の間の量子的な等価性について議論し、それをもとに行列模型の経路積分として自然な定義を提案する。
題名:T双対不変量によるII型超重力理論の再構築について
- 日時:2024年6月12日(水) 16:00-17:00
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:百武 慶文 氏 (茨城大学)
- 概要:超弦理論の真空は様々な双対性で結びついているが、なかでもT双対性は弦の運動量と巻き付きを入れ替える操作であり、II型超弦理論の構造を調べる際に重要な役割を果たしてきた。 本講演ではII型超弦理論のT双対性についてレビューを行い、T双対不変量がゼロ質量場の組み合わせで構成できることを紹介する。 さらに、フェルミオンの2次までの項をこれらのT双対不変量で再構築する。 先行研究としてはDouble Field Theoryによる定式化があるが、今回の研究は超重力理論の枠組みで閉じた形式であり、Hassanによる研究を拡張したものになっている。 文献はこちら。
題名:Celestial Holography and Its Rectified Dictionary
- 日時:2024年5月17日(金) 16:00-17:00
- 場所:理学部1号館5階1534室(コロキウム室)
- 講師:古郡 秀雄 氏 (京都大学)
- 概要:量子重力理論を探る糸口として、ホログラフィー対応が注目を集めている。 漸近平坦時空においては、そこでの量子重力理論と、2次元低い天球面上の共形場理論との対応を予想する天球ホログラフィーが提案されている。 本講演ではまず、Pasterski-Shao-Stromingerの提案する天球ホログラフィーと、その対応の辞書について紹介する。 彼らの辞書によると2点相関関数はデルタ関数的な振る舞いを持つが、演算子積展開を考えるとこれは3点相関関数の振る舞いと矛盾する。 そこでこの問題を持たない、修正した対応の辞書を提案する。本講演は[arXiv:2312.07057]に基づく。
題名:量子力学のニューラルネット表現
- 日時:2024年5月14日(火) 16:00-17:00
- 場所:理学部講義実験棟2番教室
- 講師:橋本 幸士 氏 (京都大学)
- 概要:ガウス過程に近いランダムな幅広のニューラルネットワークは、ガウス不動点の周りの量子場理論であると提案されています。 本講演では、ネットワークパラメータの統計和を持つニューラルネットワークの形に、多様な量子力学システムを翻訳できる新しい写像を提供します。 私たちのシンプルなアイデアは、ニューラルネットワークの万能近似定理を用いて、ファインマンの経路積分で任意の経路を生成することです。 この写像は、ガウス過程ではない場合でも、相互作用する量子システム/場の理論に適用できます。 本講演はこちらの論文に基づきます。
2023年度
2024 Kanto-NTU High Energy Physics Workshop
- Date: January 15 (Mon), 2024 ~ January 18 (Thu), 2024
- Abstract: The aim of this workshop is to discuss the latest exciting results of theory and phenomenology of high energy physics brought by researchers working in these subjects from the various perspectives. Another purpose is to promote research cooperation between National Taiwan University (NTU) and Japanese universities/research institutes. The workshop this time is focused upon in the Kanto area, and hence Japanese speakers are mainly invited from among those who are actively working in the Kanto area. We are looking forward to your participation. For more details >>
題名:Krylov complexity and quantum chaos: a status report
- 日時:2023年12月20日(水) 16:00 ~
- 講師:Pratik Nandy 氏 (YITP, Kyoto)
- 概要:The Hamiltonian evolution of a quantum system can cause a simple operator to become a complicated operator. This process reflects the scrambling of quantum information in the system. We probe such operator growth by Krylov complexity, quantifying the difficulty of simulating the operator evolution using a Krylov space method. We review the current progress and challenges of applying this approach to closed and open systems and illustrate some examples from the SYK model to quantum field theories.
題名:Integrable sigma models from 4d Chern-Simons theory
- 日時:2023年11月29日(水) 16:00 ~
- 講師:福島 理 (京大 理学部)
- 概要:The 4d Chern-Simons (CS) theories are a unifying framework of 2d integrable field theories and lattice models. Constructions of integrable field theories from 4d CS theories are based on two classes: order and disorder defects. Based on each of these aspects, I will talk about systematic derivations of integrable sigma models. In particular, I will explain how coset structures are presented in 4d CS theories. The derivations include supercoset sigma model and its integrable deformation for disorder defects, and non-abelian Toda field theories for order defects.
特別講義:JT重力理論と行列積分
- 日時:2023年11月27日(月) ~ 2023年11月28日(火)
- 講師:酒井 一博 氏 (明治学院大)
- 概要:We present exact results for partition functions of Jackiw-Teitelboim (JT) gravity on two-dimensional surfaces of arbitrary genus with an arbitrary number of boundaries. The boundaries are of the type relevant in the NAdS2/NCFT1 correspondence. We show that the partition functions correspond to the genus expansion of a certain matrix integral. A key fact is that Mirzakhani's recursion relation for Weil-Petersson volumes maps directly onto the Eynard-Orantin "topological recursion" formulation of the loop equations for this matrix integral. The matrix integral provides a (non-unique) nonperturbative completion of the genus expansion, sensitive to the underlying discreteness of the matrix eigenvalues. In matrix integral descriptions of noncritical strings, such effects are due to an infinite number of disconnected worldsheets connected to D-branes. In JT gravity, these effects can be reproduced by a sum over an infinite number of disconnected geometries -- a type of D-brane logic applied to spacetime.
題名:Swampland Program and Cosmological Implications
- 日時:2023年10月12日(木) 16:30 ~
- 講師:野海 俊文 氏 (東京大学)
- 概要:弦理論研究の進展により、量子重力に基づく宇宙論・素粒子論模型には一般相対性理論と場の量子論の枠組みでは捉えきれない「量子重力特有の整合性条件」が存在することが明らかになってきた。 このような条件は一般に「スワンプランド条件」と呼ばれ、理論と現象論の両側面から盛んに議論されている。本講演では、このようなスワンプランド研究の進展を自身の研究を交えながら概観する。 特に、インフレーションのエネルギースケールはどこまで高くなれるのか?暗黒物質は完全に暗くなれるのか?といった宇宙論に関連する話題を議論する。