(研究内容)運動界面の動きを評価 『アクティブマトリックスの揺らぎプロセッサ構築』 モータータンパク質は、生物に力や運動をもたらす分子機械で、アデノシン三リン酸(ATP)などの化学エネルギーを消費しながら、ナノメートルの小さなステップで一歩ずつ進みます。生体内では多数の分子が協調的に作用することで、はるかに大きな運動も実現しています。素材としても、しなやかで、生体親和性や環境への調和性が高いという点も含めて、機械として見るとモータータンパク質には、生物に独特な魅力が多数備わっています。モータータンパク質を人工的なものづくりに活用できれば理想的ですが、再現系で多数の分子を協調的に作動させるとなると、どのような動きが生み出せるのか?わからないことが沢山です。本研究では、二足歩行型モーターの「キネシン」とキネシンのレールとして働く「微小管」というモータータンパク質を用いて、多数のモーターで『揺らぎ』を発生させることが、微小部品同士を衝突させて自ずと秩序構造を作り上げる「自己組織化」のプロセスに活用できると考え、どのような揺らぎを発生できるか調べました。 キネシン・微小管の動きを人工的に再現する方法は、生物物理学でポピュラーな手法を基にしました。ガラス基板の上にキネシンを(抗体を介して吸着させて)置いて、その上に微小管を載せることで、キネシンが化学エネルギーのATPを消費しながら微小管を駆動して、微小管がまるで電車のように(長軸方向へ)移動させるものです。一本の微小管が駆動するにも、何十個以上のキネシンが作用しているはずですが、本研究ではもっと沢山の分子の大きな運動について調べたいと考え、微小管を化学架橋でネットワーク状にしてからキネシンで駆動する、という独自の手法を用いました。単純なやり方ですが、各々長軸方向に動こうとする微小管が、架橋で繋げられることで縦横に揺らぎ運動を発生します。これを「アクティブマトリックス」名付けて、微粒子を運ばれるモノとして載せてその動きを観察することで、揺らぎについて調べることにしました。観察しやすいようにガラス板2枚をスペーサーで挟んだ反応容器を作り、材料となる分子の溶液を流して基板に順に吸着させてアクティブマトリックスを構築して観察しました。 電力や化石燃料で動く従来的な機械の動きに対し、生物のモータータンパク質はATPなどの化学エネルギーを低発熱で運動に変換して、(非常に)多数の分子が協調して大きな動きを生み出すことが可能なはずです。生物の体内では、実際に幅広いスケールの動きがみえていますが、人工的にモータータンパク質のごく微小な動きを統合して効率的に運動を利用するには、協調させるやり方を様々に解明して理解する必要があると考えられます。本研究では、キネシンで動かす微小管を単純に架橋するだけでも、微粒子(微小部品のモデル)を揺らしてムラなく移動させられることがわかりました。この「かき混ぜ方」を自己組織化に活用できれば、将来、ハイテクに必要な精密なモノづくりを効率的に実現する全く新しい方法となって、生分解性材料である点も含めて持続可能な社会の構築に貢献することも期待できます。 <謝辞> <発表論文> |
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