研究内容

水圏の複雑な環境システムを解き明かし、水圏の防災・減災対策を探求する。

河川や海岸線など水圏ではさまざまな時間・空間スケールの水理現象(流れ・波など)と生物現象(個々の生物の営みや群としての遷移)が複雑に絡み合った環境システムを構成しています。そのシステムが水理的撹乱(洪水・津波など)と人為的撹乱(開発に伴う水理環境の変化、汚染など)に対して,どのような反応・影響を及ぼすのかを知ることは、持続的な社会を構築していくために重要になってきます。

水理工学研究室では、自然災害の多発化・大型化、水循環・生態系の変容といった水防災や水圏環境工学の問題に対し、「防災と環境の調和」という視点で研究を行っています。巨大津波に対し海岸林や自然地形が果たす役割の解明と減災に資する多重防御計画論の構築、河道内樹林が治水・環境に与える影響を考慮した管理手法の提案、ダム下流河道における出水規模・頻度と河床材料の変化が水生昆虫の多様度に与える影響の解明、熱帯潟湖やマングローブに関する環境工学上の提案、など、河川や海岸の計画・管理に役立てる研究を展開しています。

【研究領域の全体イメージ】

【津波関連の研究】

東北地方太平洋沖地震津波では、各地で津波が河川を遡上し、海側からきた津波と川側からきた津波に挟まれる地域も存在するなど深刻な被害が発生した。

上の図は阿武隈川を遡上するシミュレーション結果で、川側からの津波が堤防からあふれるときの状況を示している。この地点では場所により被害状況が大きく異なり,砂嘴,橋梁,河川の蛇行など、河口付近の河川の構造が津波被害に大きな局所性をもたらしたと推定される。原因を究明し、似たような河川構造を持つ地点を指摘していくことも高額においては,重要な役割である。

津波後の現地調査の様子

【低水路の河川環境(水生昆虫等)に関する研究】

近年の河川管理において生じている問題の一つに、ダム下流河川における河床環境の変化とこれに伴う生態系の変化があります。この対応策としてダム下流における土砂還元やフラッシュ放流の施策も実施されていますが、河床材料や流量変動と水界生態系との関係は未解明な部分が多く経験的な適用例が多いという実態があります。我々は、河川生態系の重要な構成要素である水生昆虫を対象として、撹乱をキーワードとした物理環境(ハビタット)と水生昆虫群集との関係に関する多面的な研究を実施しています。

<現地調査;土砂還元による河床材料と水生昆虫群集への影響>
(関東地方整備局二瀬ダム管理所との共同研究)
・現地調査風景
<室内水路実験:水生昆虫の行動と流れ場との関係評価(Isonichia japonica)>
・流速増大時の耐流失体制
・模擬避難所への避難集積行動と流れ場のPIV測定

【河道内樹林化に関する研究】

河道内樹林化は全国的に広がっている問題であり,その対策として植物の人為的除去や洪水外力増加を目的とした河道の切り下げや一部切り欠きが実施されています.しかしながら,実施後数年で再樹林化が生じるなどの問題点があることから,洪水による植物の破壊・流失条件に加え,入植条件(細粒分の堆積)をより正確に把握する必要があります。そこで、水理工学研究室では、洪水時の破壊・流失,土砂堆積を考慮した樹林化評価手法の開発をしています.

【SLIによる砂礫州の土砂堆積評価と植生繁茂との関連性の評価】

【植生動態解析モデルの開発(荒川の砂礫州への適用)】

【航走波に関する研究】

河川内を航行する船舶が作り出す航走波は,河岸に生えるヨシ原を侵食・減退させる要因の1つになることが指摘されています。そこで水理工学研究室では、航走波と土砂移動の関係性を把握することで,河岸の植生帯の維持管理手法の提案を目指しています。

【船舶の航行により発生する波(航走波)】

【航走波によるヨシ原の侵食】

【航走波の解析】

【ベトナムのマングローブ林での観測】

【熱帯潟湖・マングローブに関する研究】

当研究室は約10年前からスリランカの諸大学と様々な共同研究を実施しています。近年は、ルフナ大学との共同研究として、熱帯地方の潟湖(ラグーン)およびマングローブに関する環境工学的な研究を実施しています。

【Koggala潟湖の潟口部の国道橋】

【様々な形状のマングローブ胎生種子】

【Koggala潟湖の塩分成層の模式図(雨季小潮)】

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