ミクロの扉 埼玉大学教育学部金子研究室
ムジナモ
2015年現在、ムジナモは埼玉県羽生市の宝蔵寺沼に生育しています。1966年に宝蔵寺沼ムジナモ自生地が国の天然記念物に指定されました。しかし、ほぼ同時期にムジナモは宝蔵寺沼から消えました…。
この宝蔵寺沼にもう一度ムジナモを取り戻すために羽生市教育委員会、羽生市のムジナモ保存会の方々や私たち埼玉大学の研究室が中心となり、ムジナモが生育できる環境を保存して維持する活動を続けています。
ムジナモの数が減った理由は様々考えられますが、主な4点について紹介していきたいと思います。

・オタマジャクシなど動物に食べられてしまった
・台風などで流されて水路の外に出て枯れてしまった
・生活排水や農薬などの影響で水が汚れ生き物のバランスが崩れてしまった
・住宅開発などでムジナモが住める池や沼がなくなってしまった

これらの理由により野生のムジナモが生育できる環境はほとんどなくなってしまいました。ですが、人が栽培するムジナモは残っていました。なので、羽生宝蔵寺沼では地元の人々がムジナモの栽培と放流を繰り返しムジナモの自生を維持してきました。
〜ムジナモを守る活動〜
ムジナモは夏と冬では違った姿を見せてくれます。夏は輪生葉が連なり水面下に浮かんでいますが、冬は先端に冬芽を作り、下の写真のような丸い形になって水の底に沈みます。この状態で寒い冬を越し、暖かい春になるとまた水面に浮かんできてたくさんの葉をつけるようになります。
モウセンゴケ科の多年草で、世界的に絶滅が危惧されています。水生で、水中の小動物を食べる食虫植物です。このページではそんなムジナモについて紹介していきたいと思います。
ムジナモには捕虫葉という虫を捕まえるための葉があります。ムジナモの補虫葉はアサリやホタテのような二枚貝の貝殻のような形をしており、この補虫葉が閉じることで虫を捕まえます。このムジナモが葉を閉じるスピードは植物の動きのなかでも世界一と言われています。
約50年にわたってムジナモを守る活動が続き、2015年にムジナモの株数が初めて10000株を超えました。これからも生き物同士の関係やバランスを考えながらムジナモが生きる環境を整え、守っていかなければなりません。
〜これからについて〜
ムジナモが1年中生育できる環境を復元することを目指して2009年から緊急調査保存活動が行われてきました。活動を始めた頃はオタマジャクシが多く水面に植物が全くない状態でしたが、今の宝蔵寺沼には様々な植物がいます。ムジナモを守るためには様々な生物がバランスよく生きられる環境が必要だということがこの調査でわかりました。



宝蔵寺沼
〜ムジナモはどうして絶滅しそうなのか〜
上の画像は右にいくほど拡大しています。見たい画像の上にマウスを置いてみてください
細胞膜の近くの画像
縦に切った図
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拡大していく感覚毛、消化腺毛、吸収毛があることがわかります。感覚毛は触れると葉が閉じる仕組みになっています。消化腺毛からは消化するための液が出ます。吸収毛は実はまだどんな仕組みがあるかわかっていません。

今度はさらに消化腺毛を拡大してみましょう。
こうして見てみると、ムジナモはどうやって獲物が来たことがわかるのか、どこから消化する液が出ているのか色々と不思議ですよね。それらを調べるために今度は捕虫葉を顕微鏡で見てみましょう。
捕獲前    捕獲後    10分後    6時間後     24時間後    30時間後
では、次にムジナモは捕まえたものをどのように消化していくか見ていきましょう。

まず、ミジンコが補虫葉の中に入ると葉が閉じます。その後に葉のふちが密着してきつく閉まっていきますが、これはミジンコを消化するための液が漏れださないためだと思われます。この時間から6時間経つとミジンコが少しずつ溶け始めていることがわかります。そして24時間ほどするとミジンコは完全にバラバラになってしまいます。
こうして、捕まえた虫や小動物を溶かして栄養分を吸収した後は、また補虫葉が開いて、次の獲物を待ちます。
〜捕虫葉〜
ムジナモは夏にまれに花をつけます。30℃を超えるような日が続くようになると2〜3日の間の昼間に開花することがあります。下の写真で11時頃から花が開いていますが、1時30分にはもう花が閉じてしまっています。このように花が咲いている時間が短いため幻の花とも呼ばれています。
〜ムジナモの生活する様子〜
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〜2009年から緊急調査保存活動〜
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