☆この研究の内容
アラビノガラクタン‐プロテイン (AGP) は植物に含まれる糖タンパク質の1つで、食品添加物や絵の具などさまざまな用途に利用されています。AGPには単糖が連なってできた糖部分があります。アラビノースやガラクトースなどがこの糖部分を構成しています。
AGPの糖部分を作っているのが、アラビノシルトランスフェラーゼ (AraT)、ガラクトシルトランスフェラーゼ (GalT) などの酵素です。AraTはUDP-アラビノースからアラビノースをAGPの糖部分につなぎ換え結合させます。UDP-アラビノースのアラビノース部分がAGPの糖部分につなぎ換えられます。
GalTも同様にAGPの糖部分にガラクトースをつなぎ換えています。AGPは下の図のように合成されていると推定されます。
上に書いたように、AGPは様々な用途に利用可能で、私たちの生活に重要な物質であるにも関わらず、まだわかっていない点が数多くあります。AraTの特徴を調べることによって、AGPの構造や詳しい合成メカニズム解明の手がかりになります。
☆こんな実験をやっています
まず、植物原料としてカイワレ大根の根を使いAraTを取り出します。すり潰したカイワレ大根の根の中にAraTが含まれているので、すり潰した液から不要物を取り除き、きれいにします。次に、UDP-アラビノースを原料として、AraTと反応させ、試験管内でAGPを作ります。できたAGPを高速液体クロマトグラフィー (HPLC) という機械で分析します。この分析で、どのくらいのアラビノースが結合したかが分かります。
今後はアラビノースがAGPのどこに結合するかを知るため、AraTの働きによりつくられたAGPの構造を調べる予定です。
☆参考文献
Misawa
H, Tsumuraya Y, Kaneko Y, Hashimoto Y (1996)α-L-Fucosyltransferase
from radish primary roots. Plant Physiol., 110, 665-673. (abstract)
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