【開催報告】災害復興における人権アプローチ ー東日本大震災の経験から

開催日時:2026年1月21日(水)14:40~16:10
開催方法:ハイブリッド開催
会場:埼玉大学総合研究棟1号館 シアター教室
参加者・61名(一般参加22名・学生39名)
お話し:天童 睦子 さん(宮城学院女子大学名誉教授、『災害女性学をつくる』2021、生活思想社刊・共編著者)
ダイバーシティ推進センターとレジリエント社会研究部門の共催で、天童睦子さんを迎え、災害×ダイバーシティセミナー「災害復興における人権アプローチ ー東日本大震災の経験から」を開催しました。
お話では、冒頭、一見、中立的にみえる、「市民」、「権利」、「均等」といった概念は、社会の力関係が反映されている、という指摘があり、「災害は人々に等しく影響を与えない。そこには程度の差はあれ、社会的脆弱性と、構造的不均衡を背景に、より弱い立場の人々が被る人為的被害がかかわっている」という問題提起がなされました。
そして、大きな死者を出した「阪神・淡路大震災」では、女性の死者数が男性よりも36%多かったこと、その背景には、住宅の耐震性が不十分であったゆえの「住宅災害」の側面があったとの分析がなされてきたことが紹介され、災害時の被害実態を社会的課題として捉えていくことの必要性が話されました。
そのなかで、天童さんは、「女性学的想像力=他者の立場にたって、その人の抱える悩み、痛み、困難を想像することを通して、女性やマイノリティに対する理不尽な扱いを認識し、それを是正するための理論と実践の想像力」を持つことが重要であると話されました。
加えて、「女性」たちが自ら「力をつける」こと、エンパワーされること、また、そこから連帯が生じることで生み出される変化と創造の力があることが話され、草の根の女性たちが連帯して行動することによって、自分たちで自らの状態や位置を変えていこうとする、下から上へのボトムアップに結びつく力への期待が語られました。
セミナーは、授業(ダイバーシティ福祉論)の一環でもあり、学生と一般市民の方とが同時に受講しました。
アンケートから参加者の声の一部を紹介します。
・天童先生のお話は災害女性学の在り方と同様に、実践と理論が行き来しており、現場(社会の現状)に即した学問だと感じて興味深かったです。学生さんと一緒に受講できるのも面白いと感じました。(一般参加者)
・「人権」をもう一度問い直すことがますます必要な時代になっていると日々感じています。何よりも大切な「人間の復興」、この視点で防災・減災を考えなければと思います。(一般参加者)
・「災害は人々に等しく影響を与えない」という言葉が印象に残った。今まで災害時における女性や障がい者の被る生きづらさについて学んできたが、どこかでは社会的地位関係なく、被災地では皆大変なのだという考えを持っていたし、実際自分が被災した時に自分よりもさらに弱い人たちが困っていても、そのように考えてしまうかもしれないということに気づかされた。この考えを一人一人が持っているだけでも、常に自分より弱い立場の人がいないか、その人たちが困っていないかという思考になるので、平時からその考えを自分の中に落とし込んでおくことが大切だと思った。(学生)
・専門家や行政だけでなく、私たち一人ひとりがジェンダー平等や人権について学び、想像力を持ち続けることが欠かせない。今後は、災害やジェンダーの問題を「特別な話題」としてではなく、自分自身の生き方や社会のあり方として捉え、日常の中でできることを考え続けていきたいと思う。(学生)
・阪神淡路大震災と東日本大震災の死者数がともに男性より女性の方が約1000人多かったという実際のデータが、男性>女性という不平等な社会構造を強く根拠づけていると感じました。この講義を聞くまでは災害時のような非常時に浮上するジェンダーの問題がなぜ平常時には隠れてしまうのかという疑問がありました。しかしこの授業を聞いていくうちに、平常時に不可視化されるのは、女性が声をあげられない社会がすでに形成されてしまっているからだということに気づき、平常時のジェンダー平等に向けた取り組みがいかに大切であるかを学びました。(学生)
