女性研究者のロールモデル
Role
Model
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薬の研究を通じて患者さんを真の意味で助けたい
大正製薬株式会社
安全性・動態研究所/薬物動態研究室 主任研究員
安平 明公
研究者を目指したきっかけは?
高校生くらいまでは漠然とした夢しかなく、研究者という職業も詳しく知りませんでした。研究者になりたいと思ったのは、大学4年生で研究室に配属されてからです。未知なる世界に仮説を立てて検証していくという研究のプロセスが楽しくて、いつもワクワクしていました。実験をしても期待通りの結果が得られることは少ないですが、その分うまくいったときの達成感は格別でした。卒業後は企業で研究を続けていきたいと就職を決めました。
現在はどのような研究をしていますか?
医療用医薬品の研究開発における薬物動態の研究をしています。医薬品の多くは経口剤ですが、どれほど効力のある薬であっても腸管から吸収され、血液に入り、効くべきところに届かなければ意味がありません。また、薬が効いた後にきちんと体外に排出されることも重要なポイントです。これらを細胞レベルでの実験、動物実験、ヒトでの臨床試験などによって把握し、より望ましい医薬品を開発するための方向性を提案しています。
研究の面白いところとは?
薬が効いてほしいところへ到達しないなど、薬物動態的に望ましくない性質をもつ化合物については、構造変換を提言します。予測通りに課題を克服できたとき、薬効や毒性をうまく説明できない化合物の原因を突き止めて次なる展開案を示せたときにはやりがいを感じます。薬物動態研究においては、体内での薬の動きを数式などで理論的に解釈し、揺るぎない事実として実測データで示せるのも、理系の人間としてはすっきりするというか気持ちがいいですね(笑)。
研究をするうえで心がけていることは?
薬の研究は試行錯誤の繰り返しで、一つの医療用医薬品を開発するのに10~15年という長い年月を要します。早く世の中に出したいという気持ちもありますが、病に向き合い困っている患者さんを真の意味で助けるためには、一つひとつのデータを積み重ね、的確に読み取らなければなりません。確かな薬効を持ち、安全性も高い医薬品を開発することが私たちの使命です。
ワークライフバランスは取れていますか?
高校生と小学生の娘がいるのですが、家庭も仕事もどちらも楽しく過ごせていてバランスは取れていると思います。出張のときは、メッセージを残したり、いってらっしゃいの電話やメールをしたり、少しでもお母さんを感じられるようにしています。また、子どもが病気になるなどの突発的なことに備えて、いつでも仕事を引き継げるようにしています。育休や時短といった制度はもちろん、家族や同僚などの協力や理解も必要不可欠です。
これから研究者を目指すあなたへ
研究職は特別な職業ではないので、研究が好きならぜひ目指してほしいです。一般的な職業とかけ離れているように思うかもしれませんが、研究者に必要なのは、データに真摯に向き合い、簡単に諦めないことや、周りと協力できることだと思います。これはどの職業においても同じですよね。学校生活を通じて、強い心と友人との信頼関係を育んでください。そして、明るく元気に頑張れる人であれば、きっと楽しい研究者としての未来が待っていると思います。