Role
Model

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一所懸命に頑張る姿は、きっと誰かが見ていてくれる

埼玉県農業技術研究センター

生産環境・安全管理研究担当 専門研究員

成田 伊都美

研究者を目指したきっかけは?

高校時代から生物が好きで、ちょうどバイテクブームもあり農学部に進学しました。卒業後は、農業試験場などの試験研究機関で働きたいなと思っていました。たまたま埼玉県の女性研究者が、農薬ではなく微生物を使って防除するという論文を目にしたんです。県職員でもここまでの研究ができるのか驚き、出身は静岡県だったのですが、埼玉県の研究職に応募すること
にしました。

現在はどのような研究をしていますか?

土壌にどれだけ農薬が残っているか、農作物を植えても安全な作物が収穫できるかなど、残留農薬の分析に関する研究をしています。農薬の基準値が高いと出荷できなくなってしまうので、農薬を吸収しやすい作物は注意が必要です。簡単に残留農薬の濃度を確認できるキットを実際に農協で導入し、出荷前検査を行う体制づくりを行いました。新しい取り組みで、農薬学会から奨励賞を受けることができました。

研究をするうえで心がけていることは?

最初の配属先では研究に携われたのですが、異動先によって行政の仕事になってしまうことがありました。大学院で学位を取ってスキルアップすべきかなど悶々と悩みました(笑)。でも、実際に新しい業務をやってみると興味が出てきて、これはこれでやろうと思い直すことができたんですよね。徐々に業務にも慣れてきた頃に、当時の所長の計らいで今の職場に異動するこ
とができました。どこかで必ず誰かが頑張る姿を見てくれているのだなと思いました。

女性研究者に期待することとは?

農業は男性社会なんですよね。初の女性研究員として配属になり、最初は頑張らなくてはと思っても、体力面では男性には敵わないんです。それで、頑張るのをやめたんです(笑)。農作業はできるところまでやったら現場の作業員にお願いして、代わりにデータを細かく集めるなど、自分ができることを一所懸命にやりました。分野によって女性研究者が少ないことがあるかもしれませんが、皆さんも自分が頑張れることを見つけて精一杯やってみるといいと思います。

ワークライフバランスは取れていますか?

私は家庭を第一に考えるようにしています。子どもが3人いるのですが、「仕事をしていてごめんね」という態度は取らず、「将来みんな仕事をしなくてはいけないし、どうせするなら楽しいことがいいよ」と教えています。自宅から職場まで遠いの
で、県庁にあるサテライトオフィスを使ったり、フレックスタイムにエントリしたりして効率よく仕事をするようにしています。やるべきことをしっかりやっていれば、周囲も理解してくれます。

これから研究者を目指すあなたへ

私の母親も女性研究者でしたが、共働きが珍しい当時は、戦いながら仕事をしていたと思います。でも今は、私は無理に戦わなくてもいいと思っていて、キャリアアップなども考えていないんです(笑)。いい意味で欲張りになるというか、家庭を大事にしながら仕事をするのもありだと思うんですよね。ときには何かを諦めることがあっても、再度チャレンジできる機会がやってきます。今、何が一番大事かを考えつつ、目の前のことに向き合うことが大切だと思います