女性研究者のロールモデル
Role
Model
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社会人になってからでもいつでも研究者になることはできる
埼玉大学大学院
理工学研究科
井上 悠子
研究者を目指したきっかけは?
子どもの頃から犬やカメを飼うなど、動植物が好きで、将来は生物を研究する人になれたらいいなと憧れていました。でも、理数系の科目が得意ではなかったので、自分には無理かもしれないとも思っていました。結局、研究者になろうと決心したのは、修士課程への進学を決めたあたりです。得意な科目が興味のある学問とは限らないんですよね。私は修士課程で農学分野から理学分野に移りましたし、柔軟に研究分野を変えてもいいと思います。
現在はどのような研究をしていますか?
私は植物の老化とオートファジーについて研究しています。細胞内で自らの一部を分解してその分解産物を再利用する現象で、ほとんどの真核生物がオートファジーを行なっています。また、植物はストレス条件下に置かれると、葉が黄色くなるなどの老化が起こります。この老化をオートファジーが抑制することが報告されていますが、そのメカニズムについては不明です。これを解明することで、植物が持つストレス応答の機構を明らかにしようと考えています。
研究の面白いところとは?
何か新しいことを見つけたときは、この研究をしていてよかったと思いますね。ちょっと極端なことを言うと、インターネットでも見つからないような新しいことが大学の研究室では見つけられると思います。研究は土地を開拓するように、実験を重ねて9いくなかで徐々に結果が見えてきます。特に生物については、一つのことがわかると、また一つの疑問が湧いてきます。すぐに研究の成果は出てくるものではありませんが、そこも含めて面白いなと思います。
研究をどのように社会に役立てていきたいですか?
基礎研究の分野なので、直ちに産業利用による社会貢献ができるかというとちょっと難しいかなと思いますね。けれども、オトファジーのような植物共通の生理機能を明らかにするということは、例えば、野菜や植物を長く保存するにはどうしたらいいかといった農業における問題を解決する役割を果たすのではないかと考えています。
女性にとって働きやすい職場ですか?
大学の敷地に、NPO法人が大学の協力を得て運営している認可外保育園「そよかぜ保育室」があります。私の住んでいる地域でも待機児童がいるようですが、産後休暇と育児休業を経て1歳から娘はお世話になっています。もともと大学の女性の先生が立ち上げたそうで、教員や職員だけでなく、博士課程の留学生などのお子さんも来ていて国際色が豊かです。キャンパス内をよくお散歩しているので、研究室から娘の声が聞こえることがあるんですよ。
これから研究者を目指すあなたへ
オリンピック出場を目指すには、早く始めなくてはいけないかもしれません。でも、研究者を目指すのに、いつからでも遅すぎるということはないと思います。大学院で研究分野を変える人、修士課程に入ってから研究者を志して進学する人、社会人経験を積んでから大学院に入り直す人、本当にさまざまです。もし研究者になりたいと考えていたら、今すぐに決めなくても、将来の希望のひとつに入れておいてもいいのではと思います。