【報告】埼玉大学・埼玉医科大学 共催講演会 リーダーシップへの意欲「私にはもっと可能性がある」
日時 2024年11月20日(水)16:20~17:50
オンライン講師 赤嶺 陽子 氏
大阪市立総合医療センター 小児集中治療部
岐阜大学医学教育開発研究センター 招聘教員 他
埼玉大学と埼玉医科大学の共催講演会として、大阪市立総合医療センターの赤嶺陽子氏をお招きし、ZOOM講演会を開催し、37名が参加しました。赤嶺氏は、大阪市立総合医療センター小児集中治療部で勤務する医師であり、ハワイ大学での医学教育研修や女性医師に特化したリーダーシップ研修の経験があります。講演では、女性医師が直面する無意識の偏見(マターナルバイアス)や、リーダーシップ教育の重要性について詳しく説明されました。まず、女性医師がキャリアを築く上で、無意識の偏見が大きな障害となることが指摘されました。例えば、「母親になったら仕事を優先できない」「女性医師は当直ができないから昇進が難しい」といった固定観念が根強く存在します。こうしたバイアスにより、女性医師は本来持つ可能性を制限され、キャリアの選択肢が狭められてしまいます。赤嶺氏は、自身も「仕事ばかりしていて母親失格」「当直しない医師は不完全」といった周囲の言葉に悩まされてきた経験を語り、こうした思い込みが女性医師の意欲を奪う大きな要因であると指摘しました。
次に、リーダーシップについての考え方が紹介されました。リーダーシップは生まれつきの資質ではなく、学習によって身につけることができるスキルであり、影響力を持つことが重要であると述べました。また、役職や権力を持たなくても、周囲を動かす力があればリーダーになれると説明し、実際に海外では、女性医師向けのリーダーシップ研修が充実しており、日本においてもこうした教育の整備が必要であると提案しました。 さらに、時間管理の重要性にも触れ、医師としての業務に追われる中でも、自己研鑽やネットワーキングに時間を割くことが、将来的なキャリア形成に不可欠であると指摘しました。緊急性は低いが重要なタスク(例:リーダーシップ研修、専門性の向上)に意識的に時間を割くことで、より良いキャリアを築くことができるとし、最後に、「I am ready to lead(私はリーダーになる準備ができている)」と自信が持てるようになるリーダーシップ教育の必要性、周囲から支援の重要性が強調されました。
本講演を通じて、参加者は女性医師のキャリア形成における課題を再認識し、自らの意識改革と行動の必要性を考える貴重な機会を得ました。 参加者からは、「全ての人がアンコンシャスバイアスを持っているというのを初めて知った」、「医学会は特殊な世界、という思い込みがあったが、誰にも共通する話で勉強になった」、「『私たちは何がそんなに怖いのか?』などは、女性だけではなく男性も自ら問うべき内容と思った」、「女性がリーダーシップを得るための限界をどう打ち破っていくかを、若い人が考える機会になったと思う」などの感想が寄せられました。
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