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スーパー酵素の創出と芳香族化合物の生産制御

 植物は古来より、食糧、建築材料、家庭用燃料、薬の原料などとして利用されてきました。私たちは、植物が作り出す様々な化合物の中で、特に芳香族化合物に焦点を絞って研究を進めてきました。植物や微生物の作る3種類の芳香族アミノ酸(トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン)は、シキミ酸経路と呼ばれる共通の代謝経路を経て作られます。トリプトファンは、必須アミノ酸の一つで、ほ乳類では不足すると不眠などの症状が出ます。植物ではホルモンや薬効成分の原料になります。フェニルアラニンは、樹木の木質主成分リグニン、お茶のカテキン、大豆イソフラボンなどの共通した原料です。これらの芳香族アミノ酸は、単に栄養素としてヒトや家畜に重要なだけではなく、実は様々な薬効性を持つ物質の前駆体としても重要なのです。当研究室では、これまでに、タンパク質合成技術と遺伝子工学技術を組み合わせることにより、トリプトファン、フェニルアラニンを通常より高い濃度で蓄積できる植物の作製に成功しています。特に、我々が無細胞系で創出した「変異型アントラニル酸合成酵素」(トリプトファン生合成の鍵酵素)は、その遺伝子組換え体が従来の酵素に比べ極めて高いトリプトファン耐性能を獲得し、これを遺伝子組換えにより導入したイネ細胞は、最大で400倍ものトリプトファン含有量を達成していました。まさに我々はスーパー酵素を作り出すことに成功したのです。さらに、長年不明であった植物のフェニルアラニン生合成の鍵酵素アロゲン酸デヒドラターゼについても共同研究者らとともに同定に成功し、ここでも酵素タンパク質の詳細な機能解析技術が活かされています。薬効成分には特定植物種に固有な二次代謝化合物であることが多く、ゲノム研究から得られる遺伝子群の中には、未知の有用化合物を作るために働く酵素遺伝子がまだまだ数多く眠っています。これは、抗生物質の宝庫とされてきた土壌微生物についても同じことが言えます。

参考文献(詳しくは"Publications"をクリックして参照下さい):Nishiyama et al. Planta, 232, 201, 2010; Yun et al. Biosci. Biotechnol.Biochem., 73, 1000, 2009 ; Yamada et al. Plant Cell, 20, 1316, 2008; Yun et al. Biosci. Biotecnol. Biochem., 72, 968, 2008 ; Wakasa et al. J. Experimental Botany, 57, 3069, 2006 ; Kanno et al. Plant Physil., 138, 2260, 2005 ; Kasai et al. Planta, 222, 438, 2005 ; Yamada et al. Mol. Breeding, 14, 363, 2004 ; Kanno et al. Plant Mol. Biol., 54, 11, 2004 ; Tozawa et al. Plant Physiol., 126, 1493, 2001

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