真核生物におけるDNA含有型オルガネラの共生過程では、ミトコンドリア獲得による酸化的リン酸化型のエネルギー生産系、さらにある生物群では、葉緑体獲得での光リン酸化型のエネルギー生産系が成立してきました。これらの共生成立時には、解糖とTCAサイクルの連結の例のように、宿主細胞が元来有する物質代謝系を取り込んだオルガネラ起源生物の系と統合させる必要性があったと考えられます。一方、マラリア原虫のように、生存の場の確保に伴う代謝機構の再編成により、両オルガネラ獲得後に独自の進化を経てそれぞれのオルガネラ機能を大幅に変化させた生物も多いようです。我々は、プロトンから補酵素に至まで多用な溶質をそれぞれ選択的に膜輸送するミトコンドリアキャリア(MC)と称される一群のタンパク質ファミリーの機能解析と機能分類を進め、それぞれの生物が固有に進化あるいは退化させてきた代謝系との相関性について、進化学的観点に基づいた研究も開始しました。
これまでにマラリア特有の非環状型のTCA系路の成立を支えると考えられるジカルボン酸輸送体の同定に成功しています。さらに佐賀大学や国立感染症研究所との共同研究により、ミトコンドリア様オルガネラとして知られる赤痢アメーバのマイトソーム(mitosome)の新規輸送体の同定にも成功しています。
参考文献(詳しくは"Publications"をクリックして参照下さい):