研究内容

テーマ3:天然ガス(メタン)を化学利用するための触媒開発


これまで人類は石油資源を原料に,さまざまな化成品をつくってその生活を豊かにしてきました。しかし石油には枯渇の懸念があるので,石油だけに依存しない化学プロセスが求められています。石油に匹敵する化石資源である天然ガスは燃料(都市ガスや火力発電など)としての利用がほとんどであり,化学工業分野での利用は限られています。これは天然ガスの主成分であるメタン(CH4)が強固なC-H結合をもつ安定な分子であるため,メタンから化学工業の基幹原料(低級オレフィンや芳香族類)を製造することが難しいからです。

近年,シェール革命により天然ガスの可採資源量が急増したことを背景に,天然ガスの化学転換の気運が高まっています。高難度のメタン化学転換の鍵となるのは高機能な触媒の開発で,世界中で精力的に研究が進められています。私たちはこれまでにメタンのC-H結合を活性化する触媒について研究してきました。この知見をもとに,メタンを有用物質(エタン,エチレン,ベンゼン等)に転換する固体触媒の設計合成を進めています。

Recent Study

メタンカップリング触媒の開発 (Chem. Lett., 2020)         

ケイ素合金がメタンからC2炭化水素(エタン,エチレン)と水素を合成する触媒として作用することを発見しました。この合金触媒はC-C結合の解離能力が極めて低いため,生成したC2炭化水素を分解することなくメタン分子のみを活性化してカップリングします。
ラジカルを使ったメタン分子の活性化 (Reac. Chem. Eng., 2020)

安定なメタンがまったく反応しない条件であっても,メタンよりも反応性の高い分子は熱エネルギーで解離してラジカル種を発生します。私たちはメタンと異種分子を共存させると,異種分子から発生したラジカルによってメタンが活性化され,メタンからメチルラジカルが発生することを見出しました。このメタン由来のメチルラジカルは有用な炭化水素類へと転換されることを発見しました。


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