工系の豊かなイメージと多様な未来を!
の国・理工系進路選択エンカレッジプログラム

ご挨拶

Leader Greeting ご挨拶

国立大学法人埼玉大学 ダイバーシティ推進センター長
北田 佳子

 興味のある分野や職業を見据えて自由に進路選択や職業選択ができることは、すべての人に保障されるべき「人権」です。しかし、この「自由に」進路選択や職業選択をすることは、言葉で言うほど簡単ではありません。「自由に」と言いつつ、実は、幼いころからの環境や周囲の働きかけの結果により、知らず知らずのうちに選択肢が制限されていることに気づかず、あたかも多様な選択肢のなかから「自由に」決めたように見えるだけの状況も少なくありません。

 日本では、大学等の理工系分野に進学する女子の割合が極端に低く、女性研究者の割合も諸外国に比べ低い水準にあります。これは、決して女子が理数系に向いていないわけではないにもかかわらず、「女子は文系」といった根強い偏見があったり、身近に理工系に進学した後の将来像をイメージさせてくれるロールモデルとなるような女性が少ないことなどが原因であると考えられています。つまり、一見、多様な選択肢から「自由に」選んだように見える進路も、実は無意識の偏見や環境的要因により、いつのまにか選択肢から理工系が抜け落ち、限られた分野から選んでいるに過ぎない可能性があるのです。

 当センターでは、こうした状況を変えるべく、サイエンス体験スクール、文理融合ワークショップ、ラボ訪問、出前授業などを多数実施するとともに、理工系女性研究者・技術者を紹介する動画を多数作成し本学および当センターのホームページに掲載しています。こうしたエンカレッジ事業により、一人でも多くの女子中高生のみなさんが、理工系の分野に興味関心をもち、真の意味で多様な選択肢のなかから「自由に」進路選択ができる支援ができるよう、今後もさらなる取り組みを展開していきます。

進路選択に迷っている女子生徒の皆さんへ

埼玉大学大学院理工学研究科
研究科長 重原孝臣

 様々な社会課題の解決に向けて科学技術への期待が益々高まっているなか、国内では理工系女性人材の不足が深刻な社会課題になっています。経済協力開発機構(OECD)が加盟国を対象に行った調査によると、2019年に大学などの高等教育機関の「自然科学」「工学」の分野に入学した学生のうち、女子学生の割合は、加盟国の平均でそれぞれ52%、26%であったのに対し、日本は「自然科学」で27%、「工学」で16%、どちらも比較可能な36ヵ国中最下位でした。WISE-Pは、こうした状況を改善するために、埼玉県・さいたま市の教育委員会や、彩の国女性研究者・技術者ネットワークに加盟いただいている民間企業をはじめとする学外の共同機関・協力機関のご協力のもと、女子生徒の皆さんの理系進路選択をエンカレッジするために全学をあげて取り組んでいる埼玉大学の事業になります。

 日本の中学校や高等学校の女子生徒が科学や数学に関する高い知識やスキルを持っていることは国際的にも裏付けられているにもかかわらず、科学技術分野を志望する人が少ない現状を打破するには、女子生徒の皆さんご自身に科学技術に携わる研究室や女性科学者・技術者の生の活動に直に接していただき、理工系分野に対する関心を高めていただくとともに、将来に対する不安を取り除いていただくことが大切です。また、保護者や中学校・高等学校の進路指導の先生方とも連携して、女子生徒の皆さんが科学技術分野を進路に選びやすい環境作りを進めることも重要です。こうした目的のために、WISE-Pでは、出前授業、サイエンス体験スクールや種々のワークショップ等を企画・実施するとともに、オンデマンド動画を通じて学内外の女性研究者・技術者の現場での活躍を広く発信しています。

 WISE-Pのソフト面の取組とともに、埼玉大学では令和8年度に工学部の定員を20名純増して女子枠を導入し、女子生徒の皆さんの理工系進学をハード面からも支援する体制を整えます。女子枠を導入する学科はこれまで女子学生比率が低かった機械工学・システムデザイン学科、電気電子物理工学科、情報工学科の3学科で、定員を各々7名、7名、6名(計20名)増やし、女子枠として割り当てます。WISE-Pの企画を通して本学への関心が高まったときには、本学の理学部や工学部への入学もご検討いただければ幸いです。

 本プログラムを通じて、大学での理工系学部・学科の教育研究活動の一端に触れていただき、また、大学や企業で活躍している女性研究者・技術者との交流を通して理工系のキャリアパスについて知っていただき、女子生徒の皆さんに少しでも理工系への興味・関心を深めていただければと思います。埼玉大学の教職員一同、皆さんを全力で応援いたします。